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中学受験でよく出題される『滑車』をクリップとコインで実験してわかりやすくしてみる
滑車って何?
『滑車』は、単純な構造ながら利便性が良く、日常の中にも使われているモノが少なくありません。
しかし、『定滑車』『動滑車』さらに、それらを組み合わせてどんどん複雑になってくると、つまずいてしまう部分でもありますよね。
定滑車とは?
まずはじめに登場するのが、『定滑車』です。
『定』は、『固定』つまり決まった場所に固定されていて動かないという事です。
つまり『定滑車』は、『その場所に固定されている滑車』と言う事ですね。
問題では、こんな感じの図で使われています。
天井に付いている丸いモノが、『定滑車』。
丁度見本の写真のモノが上側のフックで天井にぶら下がっていて、下側の丸い部分にロープをかけているのを簡単に図示したものになります。
定滑車は何をする道具?
定滑車は『力の方向を変える』道具です。
荷物を上に持ち上げる時に、上から引っ張り上げなくても、滑車を使えば上以外からも荷物を上方向に移動する事が出来ますね。
これだけ覚えておこう
滑車の問題で覚えておかなければいけない事は2つだけです。
- 1本のひもにかかる力はどこでも同じ
- 上方向に引く力の合計と下方向に引く力の合計は同じ
これだけ。
例えば紐の両側に錘をつけてみます。
丁度つりあっている状態だとすると…
右側の紐にも左側の紐にも同じ力がかかっています。
滑車は力の方向を変えるダケなので、綱引きで紐の両側から引っ張っている力が同じ状態ですね。錘は動きません。
錘には、重力という下方向に引く力がありますが、反対側の錘が滑車を使って上方向に同じ力で引っ張っているので動きません。
身近なもので実際に実験してみた
家に有りそうなモノを使って実際に実験してみましょう。
使用する道具
- PETボトル2本
- 割りばし等適当な棒
- 糸
- クリップ(滑車)
- 50円硬貨(錘)
写真だと糸が重なって、ちょっと判りづらいので、こんな感じにしてみました。
天井には棒、滑車にはクリップを使います。ひもの端にもクリップをつけて錘をひっかけられるようにしてみました。
両側の錘が同じなら、バランスが取れているのが判ります。
左側の錘を2枚にしてみましょう。
左の錘を重くすると、左側が下がります。
糸の長さの関係で、左側の錘の下に台が置いてありますが、図示すると
こんな感じ。
滑車が1個でも同じです。
片側の錘を2枚にすると…
図示すると↓
当然重い方が下がります。
重い方が床に付くと滑車は止まります。
動かないという事は、バランスが取れているという事。
もし床に計りが付いていて重量を計量すると、地面に付いている錘の重量は錘一個分となります。
つまり、半分は右側の錘と引き合い、半分は床が支えている状態ですね。
文字にするとイマイチ判りずらいですが、これは固定されているのと同じ状態です。
つまり…
片側が固定されている場合、固定されている側は反対側と同じ錘が付いているのと同じ状態。
つまり、『1本のひもにかかる力はどこでも同じ』なんですよ。
動滑車とは?
『定滑車』が、その場所に固定されているのに対して、『動滑車』は固定されていない状態の滑車です。
上の図で右側の天井に付いているのは定滑車、紐の左端は天井に固定されています。
右端の錘を下に引くと、左側の中吊りとなっている滑車は上方向に移動します。
この、動く滑車が『動滑車』です。
動滑車って不便じゃない?
動滑車の図をよく見てください。
例えば動滑車を上方向に50cm持ち上げたいとします。
動滑車を50cm持ち上げるには、動滑車の両側のひもを50cmずつ持ち上げる必要があります。
ところが、ひもの左端は固定されているので動きません。
左側の分と右側の分、両方を右側で引っぱる必要があるんです。
つまりこの図の、動滑車を50cm持ち上げる為に、右側の紐を倍の100cm引く必要があります。
定滑車なら、引けば錘も当然引いた分上がるのに、動滑車は倍引かないといけなくて不便なんじゃ…?
動滑車を身近なもので実際に実験してみた
図と同じ形にしてみましたが、動滑車は動きません。
動滑車に付ける錘を倍にしてみると…
つり合いが取れました。
図示すると↓こんな感じ。
なんと、倍の重さでつり合いが取れるんです!!
『1本のひもにかかる力はどこでも同じ』、固定されている紐にも同じ力がかかっている状態となりますので…
こうやって、両側から引っ張っているのと同じ状態になるんですね。
つまり、動滑車は『半分の力で錘を動かせる。ただし紐は倍引かないといけない』道具と言う事になります。
動滑車と定滑車を組み合わせるとどうなる?
先ほどのバランスが取れている図に、もう一つ動滑車を追加するとどうなるでしょう?
すると…
追加した動滑車にも端に付けた錘の倍の重量の錘をつけた状態でつり合います!!!
図示すると↓こんな感じですね。
動滑車にかかる重量が同じならば良いので、動滑車同士をつないでも同じ事になります。
中学受験の問題集でよく見かけるヤツですね。
『1本のひもにかかる力はどこでも同じ』なので、滑車の重量や摩擦を考えなければ、動滑車を使うとどんどん支えられる重量が増えていきます。ただし、引かなければならない紐の量もどんどん増えていきます。
定滑車と動滑車を組み合わせ、重量物を持ち上げることが可能な道具が実際に販売されています。
試験の問題は、どうしても理解を確認する為に複雑になったり、トンチ?と聞きたくなるような複雑なモノも少なくありません。
問題を見るだけで『苦手』と拒絶してしまう子供も多いですよね。しかし滑車は、生活の中でもあちこちでよく見かける技術でもあります。
難しい問題に入る前に、実際に使っている滑車を探してみると興味が持てるかもしれませんね。