SFTEウイルス

身近に潜む感染症の脅威

暖かくなってきて、ハイキングや、BBQなんて屋外レジャーの予定をたててらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
春になると、活動を始めるのはヒトだけじゃないですよ。
屋外レジャーの邪魔者、蚊やマダニも活動を始めます。

昨年の話になりますがマダニが媒介する「SFTS」が増加したことをうけ、2017年9月4日、宮崎県福祉保健部が、注意を呼びかける会見を行いました。

会見の最中に、感染源であるマダニの生きたサンプルが行方不明になるという、なんともお粗末な事件が起こったのもあって、何となく覚えてらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

SFTSとは?

SFTSとは、日本語だと重症熱性血小板減少症候群となります。
Severe Fever Fith Thrombocytopenia SyndromeSの略です。

2011年に中国の研究者らによって発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるウイルスによるダニ媒介性感染症の一つになります。
2013年に国内で初めて、本症候群に起因する死亡事例が発表されました。
2014年2月25日には、田村憲久厚生労働大臣が、「草木の多い所に入る時は、肌をなるべく出さないように」と注意を喚起しています。

症状は7~14日程の潜伏期間を経て発熱、嘔吐、下痢などが現れ、致死率は6.3〜30%と報告されています。

マダニってどんな生き物なの?

マダニは、節足動物門鋏角亜門クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科 (Ixodidae) に属するダニの総称です。
マダニ亜目は、他にヒメダニ科 (Argasidae) とニセヒメダニ科 (Nuttalliellidae)を含みます。
3~4月頃から増加しはじめ、10~11月頃が本格的な活動期となります。
冬季に活動する種類もいるそうですので、冬だからと言って注意しなくて良い訳ではありません。
山・公園・河川敷・草地・庭など身近な場所に生息しています。

「ダニ」と聞くと畳やカーペットに住む生き物を連想する方が多いかと思います。
しかし、同じダニの仲間には違いありませんが、ダニとマダニは生息地もその生態も全く異なっているのです。
英語でもダニは 「mite」 、マダニは 「tick」と呼び分けがされています。

マダニの成虫は、種類にもよりますが、3~10mmぐらいと肉眼でも確認できる大きさです。

屋外にいると寄ってくるの?

マダニはほとんど移動しません。
草むらの葉の裏などで、宿主がやってくるのをじっと待っています。

第1脚末節にあるハラー氏器官や触肢などの感覚器で、哺乳類の発する炭酸ガス、宿主の臭気、体温、遮光、物理的な振動などの刺激などに反応します。
そして、通りかかった宿主に乗りうつって、吸血行為を行います。

マダニの吸血は蚊のように『刺す』のではなく『噛む』

まず鋏のような形状の口器で皮膚を切り裂き、さらに口下片を呼ばれるギザギザの歯を差し入れて宿主と連結します。
種類によっては口下片を唾液に含まれるセメントの様な物質で包むことで宿主とさらに強固に連結します。
そのうえで皮下に形成された血液プールから血液を摂取します。
このような吸血方式のためマダニの吸血時間は6~10日に達し、この間に約1mlに及ぶ大量の血液を濃縮しながら吸血します。
雌成虫の場合吸血時の体重は未吸血時の体重の10倍程度、産卵時期には更に10倍(最終的に 100倍)の体重増加がみられます。

真空でも耐えられる生命力

真空でも耐えられるので、電子顕微鏡で生きたまま観察することが可能です。
しかし、そのメカニズムは判っていません。

ダニの予防

刺咬されない為にはダニの居そうな所に入らないのが一番です。
散歩中や公園で遊ぶ際は、皮膚の露出を抑える。
マダニが嫌がるディートを有効成分とした虫よけ剤を使用する。
外出先から戻ったら、玄関に入る前にまずマダニが付着していないかを確認する。
洋服をたたいて払ったり、ガムテープ等でとったりするのもお勧めです。

マダニに刺咬された時には

マダニに刺咬されても、かゆみを伴わないことが多く、吸血されていることに気づかないこともあります。
吸血し大きく膨らんだ状態を見つけて、できものができたのか?と初めて気づくことも。
吸血しているマダニはしっかりと宿主と連結している為、無理に取ろうとすると顎が残ることがあるため、無理にとらないでください。

つまんではがそうと胴部を押してしまうと、マダニの体液(病原体を含む可能性も)を体内に逆流させてしまう恐れも有ります。
殺さずに医療機関で適切な処置を受けてください。

その他にもダニが媒介する感染症があります。

日本紅斑熱、Q熱、ライム病、回帰熱
バベシア症、エールリヒア症、など

人獣共通感染症という、ペットにも感染するものもあります。
ペットの予防薬もお忘れなく。