スッポン孵化

河原の土手に口をあける穴の正体は??

毎日犬の散歩で早朝と深夜に川沿いの土手を歩くようになり、土手に穴が開いているのを見かけるようになりました。穴の直径は7cm程で深さはまちまちですが深いもので10cm程度でしょうか。草のあまり生えて居ない土がむき出しの土手で6月ごろからよく見かけるようになりました。
モグラにしては、地表から少し掘ってやめていますし、何かの巣穴?しかし家主は見当たりません…

スッポン産卵

ある日偶然発見した球形の卵。

ある朝、土手の斜面に空いている穴の下に粉々になった破片に紛れ、草むらにいくつかの小さな球形の卵が引っかかっているのを発見しました。
卵は完全に球形で白色。直径は2cm程でしょうか。
土手に空いた穴は、どうやら何者かが産卵の為に開けた穴らしいことが判りました。
掘っている途中で木の根や大きな石があって掘るのをあきらめたか、産卵後に何者かが掘り返している??
なんにせよ、この卵を孵化させることができれば穴をあけた動物の正体が判ります。

ミッション:拾った卵を孵化させる。

恐らく、土手の地中に埋められるはずで有った(もしくは埋められていたのを何者かがほじくり返した)卵を本来あるべき環境にできるだけ近い状態に戻す必要が有ります。
なおかつ、できれば定期的に観察したい。

孵化装置の制作
まず、10cm角程の透明プラスチック容器(味噌がはいっていた容器)に4cmほど川砂をひき、水で湿らせました。
卵の乾燥を防ぎ、なおかつ呼吸を妨げないように、傾けても水がこぼれない程度、容器を下から見た際に気泡が残る程度の水量としました。
砂を少し窪ませ、卵を1/4程砂に埋め、その上から水で濡らしてから、固く絞ったミズゴケをかぶせました。
蓋をして、取敢えず孵化装置は完成。

孵化装置の設置場所
本来地中に埋められるハズであった卵ですので、できるダケ温度変化が無いように…
発泡スチロール製の箱の中に土を入れ、孵化装置を半分程埋めた状態とし、蓋をして倉庫の片隅に設置しました。

乾いたら霧吹きで水を追加…と思ったのですが、結果として上記の装置で水の追加は必要有りませんでした。

観察を始めておよそ70日。ついに…

ちょこちょこと様子を見ていたのですが、卵の外見に特段の変化がないまま、2カ月以上が経過しました。
ある日、孵化装置を開けると、それまでなかった生臭い匂いが。
観察開始から73日目、ついに卵の正体が判明しました。

スッポン孵化

 

拾った卵から孵化したのはスッポン

拾った卵から孵化したのはスッポンでした。
警戒心が強く動きも素早い、子供の頃は一度も捕獲できなかったスッポンと以外な所で再開を果たした僕は、産卵場所の観察を始めました。

2007年~産卵場所の定点観測を行いました。

そろそろ梅雨入りするかという6月の第一週頃、暖かい雨が降った日の夜にスッポンの産卵がスタートします。
周囲がひっそりと寝静まった深夜、昼間は日当たりのよい河原の土手の斜面に後ろ足で器用に穴を掘り、産卵が終わると再び後ろ足で土をかけます。

スッポン産卵

スッポンはかなりいい加減に土や苔を使って穴を埋めるので、毎日土手を歩いているうちに簡単に産卵場所を見つけられるようになりました。

スッポン産卵

穴を掘り易い場所は決まっているらしく、以前産卵した場所を掘ってしまうこともあるようです。
また付近に生息しているイシガメや外来種のミシシッピアカミミガメには卵食性が有るらしく、外来種に産卵場所を荒らされている可能性も否定できません。

イシガメと産卵場所は競合していた

イシガメ産卵

観察を続けるなかで、同じ場所においてイシガメの産卵も確認することができました。
イシガメはスッポンと違い、かなり丁寧に産卵穴を埋め戻すので、産卵を確認した後でも卵を見つけるのは困難でした。
イシガメの卵はスッポンの球形とはことなり、ナツメの実のような楕円形の形状をしています。

ミシシッピアカミミガメは自ら地面を濡らし穴を掘るが

こちらは別の場所で確認したミシシッピアカミミガメの産卵の様子ですが、アカミミガメはかなりの量の水を自身で運んできて、土を濡らしながら穴を掘るようです。
掘っている土がかなり濡れているのが判ります。
スッポンとイシガメの産卵では、自力で土を濡らすことができるのかは未確認です。

ミシシッピアカミミガメ産卵

スッポン孵化時の様子

スッポン孵化

スッポンの卵は産卵時より大きさが変わらず、スッポンは柔らかい甲羅が卵の中に丸く詰め込まれたような状態で生まれます。連鎖するように殆どの卵が同日に孵化しました。

スッポン孵化

口の先には卵嘴と呼ばれる卵の殻を破るための突起があるのが判ります。

スッポン卵嘴

孵化直後、甲羅の後ろ側が丸まっている。

スッポン孵化直後

比較:左は孵化後1週間程度経過した個体。

スッポン孵化直後と1週間比較

イシガメ孵化時の様子

イシガメ孵化

イシガメの卵は産卵時は楕円形ですが、日がたつにつれて丸く膨らんで行きます。
よく見ると卵の殻に細かいヒビがはいっており、産卵時よりもかなり大きくなっています。

イシガメ孵化

スッポンは孵化後、勢いよく動きだしましたが、イシガメは生まれてもしばらくじっとしていました。

イシガメ孵化直後

孵化直後のカメにはヘソが有る!?

哺乳類には胎盤から栄養を吸収するために、ヘソがある。
そう理科の時間に習ったハズなのですが…

卵であっても、黄身から栄養を吸収するためのヘソ(と呼ぶのかは判りませんが)が有ることが確認できます。

イシガメヘソ

これがあったから、孵化後もしばらく動かなかったのか…。
このヘソ状の組織は数日で消えてしまいました。
痕跡も暫くすると判らなくなりました。

また、孵化直後のスッポンにも良く見るとちいさなヘソのようなモノを確認することができました。

孵化のタイミング

他のサイトで、『孵化直前の卵に水をかけると孵化が始まる』というような記述を発見し、孵化の近い卵で試してみたところ、水をかけて数時間で孵化が始まりました。
考えてみれば当然ですね。野生においては土中に数カ月埋められた状態で生まれるのですから卵の上の地面はかなり固まっていると予想できます。
雨で土が柔らかくなった状態でないと土が固く地上に出てくるのが困難ですから、雨が降り卵が濡れる程度まで周囲の土が湿った状態で孵化することで、生存できる率を上げているのではないかと考えられます。

エネルギーの在庫がすっかりなくなってから生まれて、雨が降らず固い土が掘れない状況よりは、ヘソが有るような多少早いタイミングで生まれる方がその後生き残る為にも具合が良さそうです。

自力でエサを食べ始めるタイミング

孵化後、その日のうちにエサを食べ始めます。すぐに食べなくても平気ですが。
スッポンは活動する水温が比較的高めなので、6月の産卵でも孵化時には8月半ばから9月となりますから貪欲に食べないと冬眠に間に合わないからでしょうか。
スッポンの噛む力は孵化直後からかなり強く、トカゲの気分でちょっと指を噛ませてみたら流血こそしませんでしたが、かなり痛いです。

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孵化後すぐに泳ぎ砂の下へ

孵化したスッポンたちはそのまま川に入り、殆どが水流に逆らって上流方向へ泳ぎはじめました。
そしてすぐに石の影や砂の中に姿を消してしまいました。
警戒心の強いスッポンは、殆ど人目に付くこと無く成長していきます。

飼育環境下での成長

スッポン飼育

画像上の個体は孵化間もないころ、下の個体は丁度1年飼育(冬眠有り)したものになります。
1年で倍程のサイズまで成長します。
活性が高くエサを食べる時期が6月~9月末頃までの4カ月程しかない為か、加温して冬眠をさせずに飼育すると、感覚的に3年分くらい成長します。

スッポン及びイシガメの産卵から孵化までの日数

恐らく周辺の環境に左右される為、実際に確認できた日数を記します

スッポン
2007年
産卵から 73日(8/19孵化)
産卵から 62日(8/27孵化)

2008年
産卵から 77日(8/15孵化)
産卵から 64日(8/11孵化)

2015年
産卵から75日(8/10孵化)

イシガメ
2007年
産卵から 67日(8/20孵化)

2008年
産卵から 75日(8/15孵化)

国産?外来種?個体数は?

スッポンは在来のモノと養殖場から逃げ出した個体が野生化したものが生息していると言われています。
しかし、徐々に住処や産卵場所がへり、全体としては減少傾向にあり、国際自然保護連合 IUCN のレッドリストにおいては絶滅の危険性が高いとされています。
一方で警戒心が強く、貪欲で何でも食べる性質から、思わぬところで生息している個体も存在します。
TOKIOの鉄腕ダッシュでは新宿の神社にある池で巨大なスッポンが見つかりました。
水田ではスクミリンゴガイや、オタマジャクシなどエサも豊富にあることから、松阪こた堂接骨院のある松阪市においては、まだかなりの数が生息しているのだろうと考えられます。
人間の便利を優先すると、減っていく動物が増えていく。だからといって不便な生活は困ります。
効率的に共存できる環境整備ができていくといいですね。
スッポン