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惚れ薬?イモリの黒焼き
落語に登場する「いもりの黒焼き」
『いもりの黒焼き』という落語があります。
いもりが惚れ薬になるよ。という噺なのですが。
もてない男が、米屋の娘に惚れた。
何かいい方法がないかと探してみると「いもり」が良いという。
オスのいもりの黒焼きを自分の体につけ、相手の女の子にメスの黒焼きを振りかければ、好きになってくれるというのだ。
ただ、落語では、この黒焼きが、米屋の娘ではなく、米俵にかかってしまい、米俵が追いかけてくる。
といった内容。
黒焼きって、ただの炭ではない
黒焼きとは、いったい何でしょうか?
「動植物を土器のツボで原型をとどめたまま黒く蒸し焼きにしたもの」だそうです。
中国大陸から伝わってきた漢方薬的なもので、おいしくいただく調理ではなさそうですね(笑)
元禄・享保ごろには江戸・大坂に黒焼屋というものが結構あったそうです。
落語内では、高津の黒焼き屋に、男が黒焼きを買いに行っています。
現代では、ネット通販で買える!?
調べてみると、とある漢方薬局で『イモリの黒焼き』が売られていました。
2匹組で3000円。
ご丁寧に作り方まで書いてありました。
漢方・生薬の黒焼きの粉末は、黒いですが炭ではないそうです。
ネットを探していたら『梅干しの黒焼き』なんていうのも販売されていました。
黒焼きを試したいなら、これ位が抵抗なく口に入れられそう…
イモリを実際に食べても良いのか?
イモリって知ってます?
有尾目イモリ科イモリ属に分類される両生類の一種です。
田んぼや池、川の淀みなど流れのない淡水中に生息して、ミミズや昆虫、他の両生類の卵なども貪欲に捕食しています。
再生能力がとても高く、教科書にも出てきますので名前はご存知の方も多いのでは?
サンショウウオと異なり皮膚がざらざらしており、フグと同じテトロドトキシンという毒を持っています。
つまり、食べると危険ってことです。
イモリのテトロドトキシンの含有量はさほど多くありませんので、実際に食べて健康被害が出る事は殆ど無さそうですが…。
もし触った時には、目を触ったり口に入らないようにして、しっかり手を洗ってくださいね。
テトロドトキシンって?毒性など
tetrodotoxin, TTX はTetraodontidae(フグ科の学名)とtoxin(毒) の合成語です。
化学式だとC11H17N3O8。
フグの毒としてよく知られていますが、他にもアカハライモリ、ツムギハゼ、ヒョウモンダコ、スベスベマンジュウガニ、ウモレオウギガニなど何種類かの生物もこの毒をもっています。
テトロドトキシンは熱でも分解しない。青酸カリの850倍
テトロドトキシンは、三百度以上に加熱しても、分解されないので、鍋や軽くあぶったくらいでは危険です。
ヒトの経口摂取による致死量は1–2mgと言われており、経口摂取で比較してみると、テレビや小説のミステリーでよく使われる青酸カリの850倍程度の毒性を持ちます。
そのため、危険と言われているのにフグを食べて、毎年数人の死者がでています。
テトロドトキシンの解毒剤はない
現在のところ、ふぐ毒であるテトロドトキシンに対する解毒剤はありません。
ただ、テトロドトキシンは、神経毒です。
フグ毒の摂取による主な症状は、麻痺になります。
神経細胞や筋線維の細胞膜に存在する電位依存性ナトリウムチャネルを抑制することで、活動電位の発生と伝導を抑制するのです。
逆に言えば、テトロドトキシンは、神経自体を破壊しているわけではないのです。
ですので、体内で代謝によって分解されて無毒化されて排出されるのを待てば、全く正常にもどり、死ななくて済むのです。
ですので、呼吸などの麻痺症状がでるようなら、人工呼吸をすれば、救命率があがります。
ふぐ、場合によっては、いもりを食べて、苦しくなったら、直ぐに病院に行きましょう!
イモリ?ヤモリ?どう違う?覚え方は?
イモリと同じような名前のものにヤモリがいますが全く違う生き物です。
苦手な方にとっては皆同じかもしれませんが(笑)
イモリとヤモリを漢字で表記すると、それぞれ「井守」と「家守」。
「井戸(田んぼ)を守るモノ」と「屋敷を守るモノ」で住んでいる場所の違いがそのままネーミングになっています。
ヤモリは、人家の外壁などに生息し一生を通じて水中に入ることがなく、変態をしない爬虫類です。
ペットを飼いたいけど、鳴き声がちょっと。という方々に近頃は爬虫類が人気だそうで、ペットショップでは『ゲッコー』と呼ばれる外国産のヤモリが売られていたりします。
↑画像は、日本国内で普通に見られるヤモリです。
カラフルで瞼のない大きな目は見慣れると、かわいい、かもしれませんよ。